小説・コラム

小説 『編入』#11 第二章⑨

小説編入イメージ

新生活が始まりましたが、いかがお過ごしでしょうか? まずは、新生活に馴染んでいただいて、少しずつ編入試験に取り組む土台を構築していただければと思います。

さて、今週もやってまいりました!毎週金曜日20時投稿の連載記事である編入小説『編入』のコーナーです。

この連載では、「世の中の多くの人に大学編入を知ってほしい!」、「転職するように、自由に大学に移れることが当たり前の世の中にしたい!」という想いを実現するための私たちの活動の一環です。

大学編入を専門としているメディアであるTrask(トラスク)では、この小説を通して、多くの方に大学編入を知ってもらいたいと考えております。

さらには編入を志望するすべての方にフィクションではありながらも、編入した先輩の実話を元にした作品を通して、実際の編入試験のイメージを持ってもらい、合格の一助となることができればと考えております。

ぜひ、周りのご友人やご家族にシェアいただけると幸いです!

著者プロフィール

ハマダ傘写真

濱田 友来人(ハマダ ユクト)

平成7年生まれ。熊本県熊本市出身。
高校卒業後上京し、専門学校神田外語学院に入学。同学校卒業後、そこで培った経験や学びを活かし、4年制大学に3年次編入。
現在は執筆業、FXトレーダー業を主軸に活動しながらも、自らが掲げている「限りなき挑戦」という理念の下、上述した以外のことにも力を入れている。
趣味はゴールドジムでの筋力トレーニング。



#11 第二章 『TOEICを攻略せよ!』⑨

・・・・

 

その日の夕方、急に江戸川に行きたくなった。

なぜそう思ったのかはよく分からなかったが、とにかく行きたかった。

荷ほどきを終えると、その足ですぐに江戸川まで走った。 ここに来たのはあのとき以来だから、実に3ヶ月ぶりである。

夕日がもうすぐ暮れてしまう頃だった。 少しの時間黄昏ていると、僕はまた独り言を呟いていた。

「ちょっとずつ進歩はしていますが、でもやっぱり自分が思うようにはうまくいかないものですね」

沈黙が1分ほど続いていたが、果たして再びあの不思議な声が聞こえてきた。

「人生とはそういうものですよ」

僕は全く驚かなかった。

「ハハハ、なるほど」

「あなたは少し頑張り過ぎな気もしますよ」

「それ、周りの人にもよく言われます。でも、僕は自分を変えたい。ここでひとつ頑張っておかないと、将来が怖いんです」

「自分の意思を貫くのと意味もなく頑張りすぎるのは違うことですよ。がむしゃらに突っ走るのは良いことです。特に若い頃は。しかし、ときにはこれまで自分が行ってきた過程を振り返ることも大切でしょう」

「確かに、そうですね。ここにいる時間がそれに値するのかもしれませんね」

「それは私にとってもありがたいことです。何かあったらまたここを訪れてください。でも、夕方の時間に限りますよ」

「夕方限定なんですね(笑)。はい、感謝してます。僕もなにかに寄り添う存在がいて欲しかったのかもしれません。今後もよろしくお願いします」

「こちらこそ」

「では、また来ます」

「はい、お待ちしてます」

 

その日の夜、菜奈からメッセージが来た。

『合宿おつかれー。いろいろと大変だったけど、楽しかったよ。話も聞いてくれてありがとー』

『俺の方こそ、ありがとう。菜奈がいなかったら発狂してただろうね(笑)』

菜奈の返信は驚くほど早かった。

『言えてるね(笑)。話変わるんだけどさー、今度琴音とデートするんでしょー?』

やはり菜奈は知っていたか。

『知ってたか(笑)。うん、3日後だよ』

『うん、それも知ってる(笑)。言っとくけど、これは奇跡なんかじゃないよー』

『どゆこと?』

『それは、いずれわかることだよー。ならデート頑張ってこいよ!』

『はいはい、わかったよ。ならねー』

菜奈はいつも肝心なところを教えてくれない。まぁ、それも菜奈らしいといえば菜奈らしいか。

3日後が怖くなってきた。

 

デート前日になって、琴音から電話が来た。

「もしもし、琴音です。ケン、夜遅くにごめんね!」

「大丈夫だよ!どうしたの?」

「明日さ、浅草じゃなくてやっぱりディズニーにしない?」

「俺は全然いいよ!琴音、相変わらずディズニー好きだよね」

「そうだね(笑)。やっぱりディズニーに行きたくてさ!」

「うん。俺は琴音が行きたいところだったらどこでもオッケーさ!」

「ありがと。なら今回はランドの方ね!」

「最高だね。ランド初めてだから楽しみだよ」

「うん、私も楽しみ。じゃまた明日ね!」

「うん!お休み」

僕はこのあと3時間しか眠れなかった。

 

朝、一人の男が晴天の日に目覚めた。太陽の日差しはいつもより増して、僕を睨みつけるように部屋の窓に差し込んでくる。

今日はある意味で戦場に行くことになる。その戦場は、東京ディズニーランド(しかも2人きりで!)である。

僕はかなり意気込んでいたのだが、先々悪い出だしをしてしまった。 なんと遅刻してしまったのである。

市川駅を出るときは時間に余裕があったのだが、西船橋駅に着いて総武線から武蔵野線に乗り換える際、時間が合わず30分待たされてしまった。

僕は背中に冷や汗をかき、超光速で琴音に謝罪のラインを送った。

『ごめん!電車の関係で少し遅れる!本当申し訳ない!』

心臓をバクバクさせながら返事を待っていると、すぐに返ってきた。

『大丈夫だよ。焦らないでゆっくり来てね。舞浜駅の改札口出てすぐのところで待ってるね!』

今の僕にとって琴音は天使のような存在だった。せっかくのデートに遅刻するクソみたいな僕に対してまったく怒りもせず、しかも焦らないで来てくれだって?

僕のハートは琴音が放った矢によって完全に打ち抜かれていた。 舞浜駅に着いて、僕は急いでエスカレーターを降り改札を出た。10分遅刻してしまった。

改札のそばに琴音はいた。 彼女はにこやかに僕を見つめてくれた。

「ごめん、ハァハァ、遅れちゃって」

かなり息を切らしていた。

「急いで来なくてよかったのに。ケンそこんとこ真面目だね!」

ディズニーランドは駅から歩いてすぐそこだったので、僕らはゆっくり歩きながら入口のゲートへ進んだ。

今回は昨日突然ディズニーに行くことになったので、琴音はインターネットでチケットを買っていなかった。入口のブースに行って購入した。

パークインすると、僕らは早速「クリッターカントリー」エリアにある「スプラッシュ・マウンテン」のファストパスを取った。

その後、すぐに「ファンタジーランド」エリアにある「ホーンテッドマンション」に行った。

夏休み後半戦ということもあり、パーク内はかなり混んでいた。「ホーンテッドマンション」も60分待ちだった。

「今日は4万人以上は来てるね」

琴音がボソッと言った。

「そんなことも分かるの?」

「だいたいね、こうして何回も来てるとなんとなく分かっちゃうんだ」

「そ、そうなんだ(笑)」

琴音のディズニー愛にひたすら敬服した。

「そういえばさ、ケンってどうして熊本から東京外国語専門学校に来ようと思ったの?」

「そっか、このことは琴音には言ってなかったね。なんでかよく分からないんだけど、突然実家にパンフレットが届いたんだよ。そのときさ、一般受験に落ちちゃっててさ、浪人かなって思ってたんだけど、このパンフ見てもしかしたらここなら輝いた学生生活送れるかもしれないって。で、気づいたらここにいるってわけよ!」

「そうなんだ!ってことはあのパンフレットが来なかったらケンは熊本から東京に来ることはなかったってことね」

「うん、そうだね」

「素敵な話ね」

「ハハハ、そうだね」

「ってことは、こうして2人きりでディズニーに来ることもなかったってことだね?」

「えっ!?あ、あぁ、確かにそうだ」

「なんだか、運命みたい。あのパンフレットに感謝しないとね」

僕は一瞬「ドキッ」とした。さっきの言葉を発した琴音の顔がすごく可愛かった。今日の僕は閉園まで持つのだろうか。

「あ、ごめん。俺のことばっかりしゃべっちゃってたね。次は琴音のことも聞きたいな」

「うん。でも、もう乗り場に着いちゃったよ」

「ハハハ、早いね」

僕らは「ホーンテッドマンション」あとにすると、お次は「アドベンチャーランド」エリアの「カリブの海賊」に乗り、昼食を取った。

その後、「ウエスタンランド」エリアの「ビッグサンダーマウンテン」に着いた。
90分待ちと相変わらず長かったが、さっきの話の続きをしてすぐに待ち時間を忘れ去ることができた。

「琴音はいつからCAに興味を持ったの?」

「小学校6年生の修学学旅行のとき。飛行機に乗ってたキャビンアテンダントさんがすごくカッコよかったの。

かなりうるさい小学生たくさんいたんだけど、しっかりと優しく接してくれて。みんな喜んでた。そのときね、将来は飛行機で移動するお客様達を空の旅から楽しくさせられたらいいなって。その何年か後に行ったシンガポール旅行で本格的に思ったの。キャビンアテンダントになろうって」

「そうだったんだ、すごいね」

「もちろん、華やかに見えるCAの世界の裏側はビックリするくらいきついことや大変なことがあるってことも知ってるよ。

この学科に入った瞬間から姿勢のこととかかなり厳しかったから、しんどいなーって思ったりすることもあるけど。でも、それでも私が本気でやってみたいってことはどんなに辛くても乗り越えていけるはずだって。そう思うの」

「琴音なら絶対に素晴らしいキャビンアテンダントさんになれるよ!」

「ありがと。ケンはすごく優しいんだね」

「そ、そんなことないよ!みんなに優しいわけじゃ・・・」

「ケンも絶対に旧帝大に行けるよ。私が保証する」

「ありがとう」

話しているうちに「ビッグサンダーマウンテン」に乗り、時刻はすでに午後3時を越えていた。

「次、何乗ろっか」

「ジャングルクルーズがいいな!」

「ジャングルクルーズ:ワイルドライフ・エクスペディション」、「ビーバーブラザーズのカヌー探検」、「スペースマウンテン」に乗ったあと、パークインしたときに最初にファストパスで取った「スプラッシュ・マウンテン」に乗った。

「スプラッシュ・マウンテン」に乗り終わった頃には、すでに夜の7時30分を回っていたので、僕らは「ブルーバイユー・レストラン」で夕食を取った。

20時50分シンデレラ城である「ワンス・アポン・ア・タイム」に何とか間に合うようにした。

夕食を終えたあと、僕らは急いでシンデレラ城に向かった。

この日の大目玉であるショー「ワンス・アポン・ア・タイム」を観るために大勢のゲストがすでに城の前でスタンバイしていた。

僕らは遠目でしか観られなかったが、琴音は遠くからでも綺麗に観えるから問題ないと言ってくれた。

ついに始まった。

巨大なシンデレラ城そのものがこの物語の舞台となり、それをいくつものライトが映し出すディズニーの世界を僕はこの場で初めて味わった。
こんなに感動に溢れたエンターテインメントショーを美しく映し出すなんて。

何時間でも観ていられた。 そう、僕は完全に見とれていた。 しかし、僕はもうひとつの方にも見とれていた。

それは、「ワンス・アポン・ア・タイム」にうっとりしている琴音である。

まるでこのショーを初めて見たかのようにその世界に入り込んでいた。

彼女は目に涙を浮かべていた。僕はそんな彼女を見つめてしまっていた。
しばらくすると、彼女は僕が見つめていることに気づき、数十秒目を合わせると、僕にほほ笑みかけてくれて、体を僕の方に寄せてきた。

気がつくと、彼女の頭は僕の肩の上にのっていて、手を握っていた。

心の中で「あ!」と叫びつつも、この雰囲気に身を任せ生まれて初めて見た最高のショーを観続けた。

その間、僕たちはずっと無言だった。

 

閉園時間になり、僕らはパークをあとにした。
パークを出ても手を握り続けていたので、僕は思わずつぶやいた。

「あ、あの、琴音?」

「大丈夫。なにも言わなくていいよ。こんなカタチもアリだよね。行こっか」

黙って頷くと、僕らは駅の方へ歩き出した。

 

・・・・

 

『ケン、お前気づかなかったのか? 』

『き、気づくわけないだろ! まさか琴音も俺のことが好きだったなんて』

『うん、お前は俺が知る中でもダントツ鈍感なやつだな』

『うるせーよ(笑)。ジーコも菜奈のこと全然気づかなかったくせしてよ』

『あいつは演技がうまかったから。でも、琴音の場合はあからさまだったよ。4人で一緒にディズニー行ったの覚えてるだろ? 初めて会ったときから琴音はケンに気があるだろうなって思ってたよ』

『マ、マジですか』

『なんなら菜奈に聞いてみ。全部知ってると思うぜ。琴音の本音の部分も』

『オ、オッケー。聞いてみるわ』

『あ、そういえば。ジーコ4人でディズニー行ったときさ、マゼランズ出たあとあたりからずっと黙ってたけど、あのときどうかしたの? 』

『あーあれか。よく覚えてたな。マゼランズでディナー食べてたとき急に菜奈が女らしく見えちゃってさ。今まではただのちょっと仲のいい元クラスメイトだと思ってたんだけど、あのときから意識しちゃってさ。すげー動揺してたのさ』

『そういうことだったのか』

『そ、それよりケン良かったな! ちゃんと大切にしろよ。じゃあな』

ピッ。

ラインを開くとちょうど菜奈から不在の着信がかかっていた。

『もしもし、わりい菜奈。ジーコと電話してた』

『おめでとー、新婚カップルさん! 』

『いやー、まさかだったよ』

『まさかじゃないよ。ケンたちは絶対くっつく運命だったんだから』

『そうなの? ジーコも同じようなこと言ってたけど』

『ヨッ、鈍感大王! 』

『誰が鈍感大王だ! 』

『わたしはずーっと琴音がケンのこと好きだったの知ってたよ』

『そりゃ菜奈は琴音のそばにいたから知ってただろうけど。いつからそう思ってたの? 』

『初めて会う前に琴音にケンの写真を見せたとき』

『だいぶ前だな(笑)』

『わたしのディズニー計画あったじゃん? そのプランを琴音に教えてたときだよー。ケンとジーコ両方の写真を見せてたんだよ。そのときから琴音はずっとケンのことカッコいい言ってたよ。ジーコにはまったく見向きもしなかったけど(笑)』

『マジかよ。あ、そういえばディズニー計画を立ててるときさ、俺とジーコは会ってなかったじゃん? そのときから俺とジーコを連れて行くつもりだったの? 』

『そうだよー。ジーコも編入目指してたから絶対にケンと波長が合うと思って。そしてケンは英語のクラスでディズニーにまだ行ったことなくて一回は行ってみたいって言ってたから、誘えば絶対食いつくと思って』

『天才か! お前は』

『へっへーん。わたし結構頭いいんだよー』

『確かに、この緻密な計画力には頭が上がらんな』

『ならもう切るよー。はやく愛しのハニーにかまってあげなさい! 』

ピッ。

すかさず琴音に電話した。

『あ、もしもし。よかった、まだ起きてて』

『うん、ずっと電話待ってた。でも、もうそろそろ眠いね』

『今日は一日中歩き回ったもんね。すごく楽しかったよ』

『私もすごく楽しかった。ケン、これからもよろしくね』

『うん、こちらこそよろしく。なら今日は遅いからもうそろそろ切るね。おやすみ』

『はい、おやすみなさい。じゃあね』

ピッ。

今日の僕は世界で一番幸せな男であると確信した。

 

・・・・

 


11話は以上です。遂に琴音と付き合うことになったケンロー。私生活では実ることができましが、果たして勉強の方は目標達成することができるのでしょうか?今後に注目していきたいですね!

ぜひ、この小説を通して、編入試験に多くの方にチャレンジするようになれば幸いです。

次の更新は、4/26(金)20:00です。お楽しみに!

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