小説・コラム

小説 『編入』#12 第二章⑩

小説編入イメージ

春も深まり暖かくなってまいりましたが、いかがお過ごしでしょうか? マフラーやコートの要らない陽気になってきましたね。

さて、今週もやってまいりました!毎週金曜日20時投稿の連載記事である編入小説『編入』のコーナーです。

この連載では、「世の中の多くの人に大学編入を知ってほしい!」、「転職するように、自由に大学に移れることが当たり前の世の中にしたい!」という想いを実現するための私たちの活動の一環です。

大学編入を専門としているメディアであるTrask(トラスク)では、この小説を通して、多くの方に大学編入を知ってもらいたいと考えております。

さらには編入を志望するすべての方にフィクションではありながらも、編入した先輩の実話を元にした作品を通して、実際の編入試験のイメージを持ってもらい、合格の一助となることができればと考えております。

ぜひ、周りのご友人やご家族にシェアいただけると幸いです!

著者プロフィール

ハマダ傘写真

濱田 友来人(ハマダ ユクト)

平成7年生まれ。熊本県熊本市出身。
高校卒業後上京し、専門学校神田外語学院に入学。同学校卒業後、そこで培った経験や学びを活かし、4年制大学に3年次編入。
現在は執筆業、FXトレーダー業を主軸に活動しながらも、自らが掲げている「限りなき挑戦」という理念の下、上述した以外のことにも力を入れている。
趣味はゴールドジムでの筋力トレーニング。



#11 第二章 『TOEICを攻略せよ!』⑨

・・・・

 

2学期になって気分を新たに良いスタートを切ることができた。

まずは編入センターに行くことにした。ドアを開けると、左の机には相変わらず吉永先生がいた。

 

「お、町田くん! 久しぶりに来たね!調子はどう?」

「最近TOEICのスコアが上がったんですよ!600越えました! 」

 

夏休みの後半、合宿後に受けたTOEICでスコアが610になっていた。合宿の成果をひしひしと感じることができて、行って良かったと思った。

他の意味でも行ってて良かったと思ったが、これは僕たちだけの秘密にしておこう。

 

「よかったじゃない! 少しずつ合格に近づいてるわね!」

「ありがとうございます!」

「今日は陶山先生?」

「はい、久しぶりに来たんで今後何をしたらいいのか教えを請う予定です!」

「なら奥のブースにいるわよ。いってらっしゃい!」

「はい!」

コンコン。

「どうぞー」

「失礼します。先生お久しぶりです」

「町田か、久しぶりだな。お前少し焼けたな」

「この夏休み結構外にいてたんで(笑)」

「そうか。いい夏休みを過ごせたみたいでよかった。調子はどうだ?」

「TOEICのスコアが上がりました! 最初に受けたときは400くらいだったんですけど、今は610です」

「いい調子だな」

「はい、ありがとうございます。年内には700、年度末までには800取れるように頑張ります!」

「多分、町田ならいけるよ。そうだな、編入試験では700あったら勝負できるな」

「700でいいんですか? それなら思ったより普通にいけそうな気がするんですけど」

「でも、TOEICがすべてではないからな。うちの学校の強みだからこそTOEICは伸ばすことができるが、他のことを疎かにする生徒は毎年いるんだよ」

「他の科目もやっとかないと合格できないってことですよね?」

「そうだ。小論文は年が明けてから、経済学・経営学は2年生になってからしないとけない。そうなってくると、これまでみたいにTOEICの勉強ができなくなる。

いや、ほとんどできなくなると思ったほうがいいな。だから今のうちにTOEICのスコアをガンガン上げないといけないんだ」

「それほど専門科目が大切だってことですね。ちなみにどうして小論文は少し早めにしないといけないんですか?」

「ぶっちゃけた話、経済学も経営学も丸暗記すればなんとかなるんだよ。どうしてこのグラフが右に動くとこうなるのか。その流れを掴んで頭で考えることができるようになれば一番いいんだが、丸暗記でも十分に対処できる。編入学ではどの大学でも出てくる問題のパターンは決まっているからな。

それに対し小論文は、特に難関大学では出てくるお題に対して受験者の個性的な考え方を問われる。丸暗記ではなく自分自身の意見を書かないといけない。要するに頭使わないといけないってことだ。他の受験者とは違ったアイデアをひねり出す訓練をしておかなければならない。だから小論文は専門科目よりも早めに対策を始めないといけない」

「そうなんですか。俺できますかね?」

「大丈夫っしょ。大抵の人は普通に書けるようになる。その前に、町田はどのレベルの大学受けようとしてるんだ? 」

「旧帝大に行きたいです」

「ならそれくらいのことはしないとな」

「ちなみに旧帝大は全部受けられるんですか?」

「いや、全部は受けられない。東大はそもそも編入やってない。京大、阪大はやってるけど、専門学生は受けられない。

旧帝大ではないが、神戸、横国も専門学生は受けられない。受けられる旧帝大は、北から北海道大、東北大、名古屋大、九州大だな」

「あ、でもこれだけ受けられるんなら全然ありがたいっすよ」

「そうだな。編入学は一般受験とは違って、試験日は大学によって違うし、試験日が被ってなければお金の許す限りいくらでも受けられるからな」

「この学校からだと過去にどの旧帝大に受かってますか? 」

「東北大だな。近年は編入学に積極的な感じだし、一昨年初めてうちからも取ってくれたから一番チャンスがあるな」

「東北大いいですね。なら一番は東北大にします」

「分かった。考える時間はたくさんがあるからぼちぼちとだな」

「そうですね、そうします。そういえば、経済学系の編入学では英語の試験をTOEICに置き換える大学が多いんですか? 」

「詳しくは分からんが、先生たちが英語の試験を作るのが面倒だからじゃない?そっちの方が楽で安全だし、筆記試験だったら試験後にこの問題に訂正がありました、とかあったら大変だけど、TOEICならそんな心配ないしな」

「それはうちにとっては結構ラッキーなことですよね!」

「確かにな。毎年うちから滋賀大学や埼玉大学にも輩出してるが、その2つはTOEIC提出と面接しかないからな」

「それだけですか? かなり少ないですね」

「この2つの大学はぜひ受けてほしい大学だな」

「少なくともその2つのうちのひとつは受けようと思います!」

「うん。あ、そうだ。これは聞いておかないといけないんだが、姉妹校を受ける気はあるか?」

「それも受けておいた方がいいんですか?」

「この会話の流れだと町田は受けない方がいいな」

「どうしてですか? 」

「目指すレベルが旧帝大だからだよ。ここから姉妹校への編入は、言葉を選ばずに言うと、ものすごく楽で簡単だ。相当なトンチンカンじゃない限り、まず落とされることはない。同じグループの大学だからな」

「え、え? 簡単だからっていう理由だからですか?」

「それもあるが、一番の理由はそれが逃げ道になるからだよ。試験は6月と10月で2回ある。いずれも一番行きたい東北大の試験よりも前にあって、結果もそれより前に分かる。そこに受かったからもう編入はいいや、ってなる可能性があるからな。せっかく国立大を目指してたのに、そこに受かったばっかりにモチベーションが下がって勉強をやめてしまった先輩は過去に何人もいる」

「そういうことでしたか。確かに、姉妹校への編入は一番安心できる進路先ですもんね」

「一応、弁解はしておかないといけないが、はじめから姉妹校が一番に行きたくて編入を目指すのであれば全く問題ない。そういう生徒はその体で指導をする。ただ、町田の場合は旧帝レベルを目指すから言っておいた」

「最初はそっちも受けておいた方がいいんじゃないかなって思ってたんですけど、退路を断ちます」

「よし。ならその感じで俺も指導を進めていくぞ」

「はい、ありがとうございます。小論文の具体的な指導はいつ頃からしてくれますか?」

「3学期に入ってからだな。それまではこれまでどおりTOEICのスコアを上げるのと、日々世界の時事問題やニュースに目を通しておくこと、いいな?」

「分かりました。頑張ります!失礼しました」

「おう、頑張れよ」

 

面談のあと、僕はそのまま編入センターで勉強することにした。まずは年末までにTOEICスコア700を取ること。あとこれまで通り、常に社会情勢にアンテナを張っておくこと。そして年が明けたら小論文を書き始める。

とりあえず、短期的な計画は立てた。しかし、ここで2点問題がある。

ひとつは、年末までにTOEICが700を越えるかどうか。もしかしたらいかないかもしれないという不安があった。

ただ残り3ヶ月ある。これまでの伸びで考えたら、十分にいける勝算はあった。しかし、これからはもう少し質の高い勉強をする必要はあるだろう。

これまでみたいに、ただがむしゃらに勉強量を増やせば良いというわけにはいかない。

そう考えさせられるくらい、700という壁は高いものなのだ。

あとからジョナサンのところに行ってこれからどうすれば良いのか聞いておこう。

もうひとつは、社会情勢の情報が今のままだと得られる媒体が少々不足しているということだ。

この約半年読書、ニュース、情報番組、ニュースアプリで情報を得ていた。これだと十分なような気がしそうだが、これには大きな欠点がある。

自分が好きな情報に偏りがちになるということである。

ニュースは放送時間が長いため、時間を取られてしまう。勉強時間も確保しないといけないため、どうしても興味のないところは飛ばしてしまう。アプリも同様だ。情報が偏ると何がいけないかというと、特に小論文の問題で自分が不得意な問題が出たとき、対応できなのである。

なので、結局のところ僕は新聞を読みたいのである。

新聞だと興味ない分野でも、両面に広げてるとタイトルだけでも視野に入る。しかも15分程度で読めるので、短い時間で多くの情報を吸収することができる。

僕はその中でも日経新聞を読みたかった。他の新聞とは違い、経済系の時事問題が多く取り上げらているからである。

実は、一度日経新聞を自分で定期購読しようと思ったことがある。しかし、それは厳しいと判断した。月額4500円もするからである。学生にとって月に4500円取られるのはなかなかの痛手である。なので、どこかでタダで読めないかなと思っていたのだ。

と、考えてたところ、誰かが僕を呼ぶ声が聞こえた。振り向くとその声の主は吉永先生だった。

「どうしたんですか?」

「んふふ、来週からここで新聞が読めるようになったのよ! 」

「マジですか? よっしゃー!俺ずっと新聞読みたいなって思ってたんですよ!」

「だと思ってたわよ。町田くん旧帝大目指すんでしょ? 」

「あ、ブースから聞こえてました? 」

「丸聞こえよ(笑)。旧帝目指すんなら新聞読まないとね!」

「どの新聞が読めるんですか? 」

「産経、朝日、日経よ」
「3紙も、すげー!ありがたいです!」

どうやら2つの問題のうちのひとつは速攻で解決したようだ。

 

編入センターは午後7時で閉まるので、僕は勉強を終わらせ、帰ることにした。

本館の1階を歩き、もうすぐ出口というところで偶然TOEIC講座の担当講師ジョナサンに出会った。

彼はイギリス出身のネイティヴ教員で、主にTOEICに関係する授業や講座を担当している。

そんな彼はこの学校だけでなく日本国内で誰もが尊敬するTOEICの帝王と呼ばれ、学外で行われる公開TOEICを毎回受け、いつもフルスコアを取る超人である。

自身のTOEICの参考書も10冊以上も出版しており、いずれも重版がかかるほどの名著であるのだ。

どうして東京外国語専門学校がこんな超人を引き抜くことができたのか謎である。ジョナサンにだけはかなりの高賃金を支払っているのだろうか。これ以上は生々しい話になるのでここでは置いておこう。

「ハイ、ケーン、最近どうですかー? 」

あ、言っておくが、ジョナサンはイギリス人だが日本語ペラペラである。日本に来て6年経つので、自然と喋れるようになったらしい。

「ハイ、ジョナサン! ちょうどいいタイミングで会ったよ」

「どうしたですか?」

「スコアが上がってきたからさ、もうそろそろレベルの高めの参考書が欲しくてさ。何かオススメないかな?」

「オー、なるほど。それならいまのケンにとっていいものがありますよ!」

「ホント? 教えて!」

「まずはリスニングの方! CNNマガジンです!」

「合宿のリスニングの授業でやったやつでしょ?」
「ハイ、そうでーす! すでに600越えているケンはこのレベルの教材を扱っても大丈夫だと思いますよ!」

「うん、ありがとー。そしてリーディングは?」

「そうですね。リーディングパートに関してはTOEICの公式問題集をひたすら解いてください!1回だけでなくすべての問題に丸がつくまで、何度も繰り返してください。それが大事です」

「わかった! 帰るときに書店よって買ってくるよ! 」

「ケン!あとひとつ。これからも単語の勉強は続けてください」

「続けるけど、今の単語帳はもう全部覚えちゃったしなー」

「それなら打ってつけのやつがありますよ! はい、これ」

「これは? 」

「もうすぐ私の新しいTOEICの単語帳が発売されまーす。これは少し上級者向けの単語帳です。レベルはちょっと高いですが、今のケンにはちょうどいいと思いますよ! 特別に差し上げます」

「えっ、いいの? ジョナサンありがとう! 俺頑張るよ!」

「ハイ、頑張ってください! 編入学でもこのアドバイスは役に立つはずです。では、来週会いましょう」

 

・・・・

 


12話は以上です。TOEIC合宿から帰ってきて、勉強に本腰を入れたケンロー。

「どんな情報を得るべきなのか?」という点については非常に参考になる内容が書かれていましたね。無意識の偏りを避けることは小論文対策の観点から非常に大切です。

次の更新は、5/10(金)20:00です。来週はゴールデンウィークということもあり、休載させて頂きます。誠に勝手ながら申し訳ございません。

次回もお楽しみに!

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