小説・コラム

小説 『編入』#15 第二章⑬

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令和になり1ヶ月が経過しましたが、いかがお過ごしでしょうか? 最近はとても暑くて、薄着で過ごせる季節になってきましたね!

さて、今週もやってまいりました!毎週金曜日20時投稿の連載記事である編入小説『編入』のコーナーです。

この連載では、「世の中の多くの人に大学編入を知ってほしい!」、「転職するように、自由に大学に移れることが当たり前の世の中にしたい!」という想いを実現するための私たちの活動の一環です。

大学編入を専門としているメディアであるTrask(トラスク)では、この小説を通して、多くの方に大学編入を知ってもらいたいと考えております。

さらには編入を志望するすべての方にフィクションではありながらも、編入した先輩の実話を元にした作品を通して、実際の編入試験のイメージを持ってもらい、合格の一助となることができればと考えております。

ぜひ、周りのご友人やご家族にシェアいただけると幸いです!

著者プロフィール

ハマダ傘写真

濱田 友来人(ハマダ ユクト)

平成7年生まれ。熊本県熊本市出身。
高校卒業後上京し、専門学校神田外語学院に入学。同学校卒業後、そこで培った経験や学びを活かし、4年制大学に3年次編入。
現在は執筆業、FXトレーダー業を主軸に活動しながらも、自らが掲げている「限りなき挑戦」という理念の下、上述した以外のことにも挑戦している。
趣味はゴールドジムでの筋力トレーニング。



#15 第二章 『TOEICを攻略せよ!』⑬

・・・・

『明日さ、授業が終わったあとちょっと相談あるんだけど、いいかな?』

2月の上旬。このラインを送ってきたのは菜奈である。菜奈がこんなことを言うのは珍しい。一体どうしたのだろうか。

菜奈いつもは明るくて授業でもほとんど毎日会っていたが、僕が見てる限りでは特に変わった様子はなかった。

10分ほど考えていると、あることを思いついた。

「もしかしてジーコと何かあったので!?」

なんらかのきっかけでジーコとうまくいかなくなって、それを僕に相談するのではないかというひとつの仮説が浮かび上がった。

だが、ジーコからは菜奈との関係が悪化したという話は特に聞かなかったので、早くもその仮説は崩れかけていた。

しかし、なぜか良い予感はしなかった。

 

次の日、僕が立てていた仮説は半分合っていて半分間違っていた。

この日の英語での授業では、菜奈はこれまで通りだったし、他のクラスメイトともいつもどおり話していた。

授業が終わり、昼食をコンビニで買ったあと、とある教室で2人きりで食べた。

教室に入るまでは何気ない会話をいていたが、入った瞬間何か異様な空気になった。

その空気に飲まれて緊張してきた。

「今日はありがとね。2人きりでいるの琴音やジーコが見たら怒るかな?」

「んー、そこは別に大丈夫じゃないかな。俺ら親友みたいなもんだし。今日はどうしたの?」

「あのね・・・、わたしも編入目指そうかなって思って。今日ケンに聞いて欲しかったんだよね」

え、そんなこと?

想像していたのと違って心の中でホッとしてまった。かなり構えてしまった僕がバカらしく思えた。

しかし、菜奈の表情はいまだに真剣である。異様な空気もまだ感じる。

菜奈は僕の感情に気づいたのか、眉をひそめていた。どうやら僕は自分の感情が表に出やすい人間らしい。

「ケン、どうしたの?」

「あ、いや、なんか。菜奈がどうしてそんなに真剣な顔をしてるのかが分からなくて」

「どういうこと?」

菜奈は少し怒っているようだ。僕は菜奈の機嫌を直すためにすぐさま弁解した。

「俺は別に全然いいんじゃないかなって思ってただけだよ。だから、もっと気楽に言ってくれてもいいんじゃないかな?そ、それに菜奈も一緒に編入目指してくれるんなら俺もうれしいし。ジーコも喜ぶんじゃないかなって」

菜奈はようやくいつもの表情に戻ったが、すぐになにか思いつめた顔になった。

「そこなんだよねー。わたしもジーコが喜んでくれると思ってそのこと言ったんだけど」

「ジーコなんて?」

「それって俺が編入目指してるから菜奈も編入にしたいだけじゃないのか?って」

「ジーコが編入目指してるから菜奈も編入したい、ってことだよね?」

「そうなの。でもジーコはそんなんで決めてしまっていいのか?って。単に俺と一緒にいたいからっていう理由で編入に変えていいのか?って。そんな簡単に変えてしまっていいのか?って」

「あ、そっか。菜奈はもともと就職目指してたのか」

菜奈がこんなに思いつめていた理由がようやく理解できた。

「たしか、菜奈は旅行関係の会社に就職したかったんだよね?」

「うん。だから観光科に入ったんだけど・・・。なんかね、就活やっていくうちに思ったの」

「なにを?」

「自分は本当にそれでいいのかって。わたしね、単に旅行が好きだからっていう理由で旅行会社に行こうって思ったの。でも、そんな浅い考えじゃ絶対に受からないって分かっちゃったんだよね。

わたしは琴音みたいに明確な理由があるわけじゃないの。だから専門卒でいきなり就職じゃなくて、編入してからで遅くないんじゃないかなって思って」

「それで菜奈も編入にしようって思ったのか」

「うん。でもね、それだけじゃない。本当はやっぱりジーコと一緒にいたい!」

「ジーコと同じ道を歩きたい!離れたく・・・ないよ。好きな人と一緒にいたいっていう理由で編入目指すんじゃダメなのかな?だってこのままだと絶対離ればなれになるんだよ?嫌だよ。そんなの。一緒に目指せるんだったらわたしはそうしたいよ。うっ、うっ・・・。」

菜奈はついに感情が爆発したのか、号泣していた。

菜奈の今の姿を見て僕はこれまでにないくらいに心をエグられた。

その涙を見て、僕ももらい泣きしそうになった。これはとても他人事として捉えることができなかった。

考えたくはなかったが、ここを卒業したあと僕と琴音は離ればなれになる。まだ、琴音とそのような話はしたことはなかった。 

否、その話をしないようにと、無意識に避けようとしていたのかもしれない。   

だが、菜奈はそのことに真剣に向き合っていた。少なくとも僕よりは。考えに考え抜いて、その結論にいたったのだ。菜奈なりに自分と向き合ったうえでの結論だったのだ。

だが、ジーコは必ずしもそれを良しとしてくれない。

だから、菜奈は2人に一番近くてかつ編入を目指している僕に相談したのだ。

こうなったら僕がジーコを説得するしかない。

おそらく菜奈は自分がここまで考えていたことをジーコに伝えていない。早い段階でジーコに門前払いされたのだ。

これは早めに解決しておかないと、取り返しのつかいないくらいに大きな問題になる。僕は直感でそう思った。

 

その日の夜、僕はジーコに電話した。

なんとしても菜奈の想いをジーコに伝えてあげないといけない。でないと、2人とも絶対に後悔する。ジーコを説得させなければならない。なんとしてでも。

『ケン、どうした?』

『わるいな、夜遅くに。ちょっと菜奈のことで電話したんだ』

『もしかして菜奈も編入を目指したいってことか?』

『うん。そう』

『はぁ、やっぱりケンに相談してたか』

『どうしてジーコは菜奈も編入目指すことに対して肯定的じゃないの?』

『人生での大切な選択を、単に俺と一緒にいたいからっていう理由で簡単に決めて欲しくなかったんだよ』

菜奈の言っていたこととおおむね合っていた。

しかし、この発言からして、ジーコもジーコなりに考えて返事をしたのだなということが読み取れた。

『ジーコ。よく聞いてくれ。菜奈はただ一緒にいたいからっていう理由だけで編入を目指しているんじゃない』

『どういう意味だ?』

『うまくは言えないけど、菜奈は遊び半分で編入を目指すって言ってるわけじゃないんだ。菜奈は、普段は明るくていつもあんな感じだから冗談っぽく聞こえたのかもしれないけど、菜奈はジーコが思ってるよりも深く考えてる。その意味が分かるか?』

『あぁ、それは俺が一番分かってるさ』

『そ、そうだよな。菜奈のことについては俺はジーコの足元にも及ばない』

『なぁ、ケン。編入学ってカップルがイチャイチャしながらお祭り気分で勉強して受かるもんなのか?そんなんで旧帝大に受かるのか?』

『・・・・・・』

『ケン、俺は本気なんだよ。本気で旧帝大に受かりたい。だから、カップルで仲良しごっこの勉強をするわけにはいかない』

たしかに、ジーコの言ってることは正しい。反論の余地はない。でも、それよりももっと大事なことをジーコは見失っている気がする。

僕は深呼吸してジーコに言った。

『今日、菜奈は泣いてた。あんな菜奈初めて見たよ。なんでか分かるか?本気でジーコを想ってるからだよ。

菜奈はイチャイチャしながら編入を目指すっていう顔じゃなかった。ただ、単にジーコが好きだからっていう感情じゃなかったよ。2人3脚で困難を乗り越えていく覚悟を俺は菜奈から感じた。生半可な気持ちなんかじゃない。彼女なりに自分と向き合ってたんだよ。

今日はそれを代わりにジーコに伝えたかった。菜奈も本気だよ。ジーコと同じくらいに。俺は2人で編入という大きな壁に立ち向かっていくことを心から応援したい』

『そっか。菜奈はそんなことを・・・』

ジーコの声が止まった。まだ気持ちの整理ができてないようだった。

数十秒の沈黙が流れたあと、ジーコは口を開いた。

『俺は・・・、大事なものを失うところだった。
菜奈のことをすべて知ってるつもりだった。ケンにまで心配かけてすまねえな。ちょっとさ、やらないといけないこと思い出したから電話を切ってもいいか?』

『あぁ。ちゃんと大切にしろよ。じゃあな』

ピッ。

電話を切り、僕はベランダから綺麗な夜空を見上げた。あの2人はもう大丈夫だろう。

・・・・


15話は以上です。編入期間には、パートナーがいる人は関係維持が非常に難しいことはよくあるようです。周囲の人からの理解は、非常に大切なことが分かりますね。ジーコと菜奈の今後に注目していきたいですね!

ぜひ、この小説を通して、編入試験に多くの方にチャレンジするようになれば幸いです。

次の更新は、5/31(金)20:00です。お楽しみに!

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