小説・コラム

小説 『編入』#16 第二章⑭

小説編入イメージ

夏に近づき暑くなってまいりましたが、いかがお過ごしでしょうか?もうそろそろ夏休みの旅行を計画していきたい時期にもなってきましたね!

さて、今週もやってまいりました!毎週金曜日20時投稿の連載記事である編入小説『編入』のコーナーです。

この連載では、「世の中の多くの人に大学編入を知ってほしい!」、「転職するように、自由に大学に移れることが当たり前の世の中にしたい!」という想いを実現するための私たちの活動の一環です。

大学編入を専門としているメディアであるTrask(トラスク)では、この小説を通して、多くの方に大学編入を知ってもらいたいと考えております。

さらには編入を志望するすべての方にフィクションではありながらも、編入した先輩の実話を元にした作品を通して、実際の編入試験のイメージを持ってもらい、合格の一助となれればと考えております。

ぜひ、周りのご友人やご家族にシェアいただけると幸いです!

著者プロフィール

濱田 友来人(ハマダ ユクト)

平成7年生まれ。熊本県熊本市出身。
高校卒業後上京し、専門学校神田外語学院に入学。同学校卒業後、そこで培った経験や学びを活かし、4年制大学に3年次編入。
現在は執筆業、FXトレーダー業を主軸に活動しながらも、自らが掲げている「限りなき挑戦」という理念の下、上述した以外のことにも上述した以外のことにも挑戦している。
趣味はゴールドジムでの筋力トレーニング。



#16 第二章 『TOEICを攻略せよ!』⑭

・・・・

今日は「編入学経済系小論文プレ学期」の授業初日である。これは5限にあたり、放課後に行われるので、開始時間は5時15分からである。

本館の4階の教室で行われ、全部で6回ある。 

教室に入るとまだ誰もいなかった。てっきり教室を間違えたのかと思ったが、それはすぐに撤回された。

2人の男女が入ってきた。

ジーコと菜奈である。今の2人はこれまで以上に仲良く見えた。

菜奈は普段通りで相変わらずニコニコしていた。

この前のことはどこへ行ったのやらと僕は苦笑するのと同時に、今の2人をものすごく微笑ましく見えた。

ジーコの方もよく笑っていたので、あのあとの菜奈との会話もうまくいったのだろうと推測できた。

「やあ、2人とも」

「やっほー、ケン!げんきー?」

「2限のときに会ったじゃん(笑)」

「へっへー。そんなの忘れましたー」

「フッ、菜奈らしいな。今日から始まるから頑張ろうぜ」

「うん!」

菜奈は元気よく答えた。ジーコも大きく頷いた。

5分ほどしてから陶山先生がやってきた。

「こんばんは。この講座の担当をします。陶山です。みなさん、頑張りましょう」

先生が淡々と喋っていたせいか、僕以外の受講者は少し戸惑ったような感じだった。僕はすでに先生と結構話していたし仲良かったのでなんともなかったが、他の人たちはそうでもないらしい。やはり陶山先生の第一印象は決してよろしくないようだった。

受講者はパッと見たところ、20人くらいだった。つまり、この人たちがライバルになるということである。それはジーコも菜奈も例外ではない。

まだプレ学期ではあったが、ついに始まってしまってしまったんだ、というちょっとした焦りを隠せずにいた。

「編入学経済系小論文プレ学期」の第1回目のテーマは「論じるとは何か?」である。

90分の授業の中で、最初の45分は先生の説明があり、ちょっとした休憩を取ったあと、残りの時間で実際に小論文を書く形式になっている。

書く時間については本番の時間よりも短い。ましてや、まだまともに書いたこともないので、時間内にかけるわけがない。

なので残りは家で書いてきて、次の授業までに編入センターに提出する。

陶山先生の説明は思いほか分かりやすかった。無駄のない説明でたまに具体例を用いながら解説してくれる。

僕以外で先生に嫌悪感を抱いていた生徒も時間が経つにつれて心を開いていったし、授業も熱心に聴いていた。

「まず編入学において、特に難関大は受験生になにを求めているか。それは自分自身の知識を披露することではなく、論理的に自分の考えを述べる力があるか、ということです。

論理的っていうのは、分かりやすく言うと相手、この場合は小論文を採点する大学の先生方ですね。に、『なるほど』と言ってもらえるような文章を書くということです。重要なのは、自分の言いたいことを論じ、それを採点者にわ分かってもらうことなんですけど、意外とこれが難しい。

皆さんにがこの時期に書くときはあまり良い評価が返ってこないことがほとんどです。でも、めげないでくださいね(笑)。書き続けたらだんだんと評価が良くなってきます。同じ問題を何度も繰り返して、何度も再提出してくださいね。 

4月になったら、皆さんにはこの小論文授業のだけでなく、マクロ経済学・ミクロ経済学・経営学も受けることになるのですが、小論文はこれらと大きく違うところがあります。ぶっちゃけた話、編入学では経済も経営も出てくる問題って決まってます。そして、その答えも決まってるんですよ。

でも、小論文に関しては決まった答えがありません。論じるということは自分で判断することですから、正解がないんです。なので、自分なりにベストな判断を書く練習を今のうちにしておく必要があります。頑張ってくださいね。

ふぅ、ちょっとここらへんで一旦水の飲みますね。あ、みなさんも背伸びとかしてもらっても大丈夫ですよ。やっぱり放課後から授業ってキツイですよねー」

少なくとも菜奈とジーコと僕はこの授業、いや陶山先生の説明の虜になっていた。気がついたらとっくに時間が過ぎていた、という感じだった。

僕ら3人は顔を合わせていた。

「陶山先生って最初は怖そうって思っていたけど、結構面白い人だよねー」

菜奈が言った。

「そっか。菜奈は陶山先生を初めて見たのか」

「ケンは何回も編入センターに行ってたんだよねー?」

「ま、まぁね。ジーコは?」

「ん?あぁ、何回か。陶山先生は話してるとかなりおもろいよ(笑)」

「よし、っと。なら、再開しますね。あと少しで解説は終わるので、その次は問題を配ります。もう少しだけ辛抱してくださいね。先ほど小論文では論じることが大事だと言いましたが、かと言ってなんでも論じればいいというわけではありません。どういうことかというと、書くときには経済学的に書く必要があるということです。

・・・皆さん、ポカンってしてますね。大丈夫です。ちゃんと解説します。

経済学的に書くということの一番の根本となるのは、人間には行動するときになにかしらの『インセンティブ』が働く、ということです。
インセンティブっていうのは、ここでは『動機付け』という意味です。

例えば、現在の世の中がここまで便利になったのは、これまで生きてきた先人たちが『楽をしたい』と思ったからです。飛行機や新幹線はその代表と言ってもいいですね。歩いて長距離移動するのは面倒だから、飛行機や新幹線を発明したのです。この『楽したい』という感情が無かったら、今の世の中がここまで発展することはなかったでしょう。

人はあらゆる動機付けに反応します。さっきの例以外にも、お金、自分のステータス、優越感、自分の都合のいいことなどいろいろなものに反応します。ここまで言ったら、みなさんにも思い当たる節があると思います。もし、このインセンティブを無視したらそれは経済学的に論じているということにはなりません。


このように、経済学的に小論文を書くときは、論じる対象はだいたい個人や企業、政府の3つです。が、どのようなインセンティブに反応するのかということを普段から考えることが大切なんです」

ここで今回の説明が終わった。

「では、この辺で今回の説明は終わります。その次は演習の時間っと。これから5分休憩取ったあと、問題を配ります。おそらく、この時間で書ききるのは無理なんで、できなかった部分は宿題ということにします。書いたら、編入センターの吉永先生に渡しといてください」

と言って先生は問題用紙を配り始めた。

配られた問題の内容は、「近年、少子高齢化が急速に進行している時代で、なぜ東京をはじめとした大都市は人口減少ではなく、むしろ人口増加という現象が起こっているのか。以下の記事を読んでから、あなたなりの意見を論じてください」というものだった。

「・・・・・。なんじゃこりゃ」

まったく意味が分からなかった。これはまず付属の記事を理解するので今日の授業が終わってしまいそうだ。

45分後、授業が終わった。

最初はどうなることやらと思っていたが、参考資料を読み込んだら、意外と書けそうだという不思議な自信を得ていた。

この時間で、最初の序論だけは書けた。

ジーコと菜奈はまだ何も書けていなかった。

「いやぁ、まったく書けなかったよー。これ難しすぎるな」

ジーコは苦笑しながら言った。

「これ難しすぎなーい?」

菜奈もお手上げのようだ。そんな話をしてると、陶山先生が僕らに近づいてきた。

「最初はそんなもんだよ。みんな書けなくて当たり前。でも、じっくり時間かけていいから最後まで書ききることが大切だよ」

「先生。これってどれくらいの難易度なんですか?」

「んー。これは完全にオリジナルで作ったからあれだけど。そうだな、難関国立大で出てもいいくらいじゃないかな」

「いきなりそのレベルの問題は俺らにはきつくないですか?」

「確かにね。でも小論文に関しては、初めからそれくらいのレベルに触れておくくらいでいいんだよ。授業でも言ったけど、今のうちから頭使って、 自分の意見をひねり出す訓練をしないといけないからね。最終的にはそれを時間内に終わらせる必要があるんだけど。簡単な問題を解いてもあんまり力にはならないんだよ。これくらいのやつから始めて、ガンガン練習しないとだな」

「そうですね。俺頑張ります!」

「でもあんまり飛ばしすぎるのも良くないから、今はできることをこなしとけばいいからな」

「分かりました。じゃあ、俺ら帰ります」

「おう。じゃあな」

 

 

季節は飛んで卒業シーズンの3月に入っていた。

僕は今年卒業する先輩たちを祝福し、またしてもさまざまなアドバイスをもらった。

ビジネスキャリアの先輩たちからは、2年生になったら授業がさらに厳しくなること(これまでも十分に厳しいと言えるのだが)、ホリさんや河野さんからはもちろん編入のアドバイスだ。

河野さんは最後にこう言い放った。

「待ってるからな。町田、お前も絶対に来い」

「はい!絶対に受かります!待っててください」

このときの河野さんは最高にカッコよかった。この言葉に痺れた。これまでにない電流が全身を走った。

僕もその言葉を言ってみたい。そう思った。



下旬、僕は今年一番緊張する局面を迎えた。今年度で最後のTOEICを受けたのだ。

今回受けたのは、公開TOEICと呼ばれるもので、これは東京外国語専門学校内で受けることはできない。なので、TOEICの公式団体が実施する会場で受けないといなかった。

これまでも一応、公開TOEICを受けてきたが、ほんの数回でいつも学内の任意TOEICを受けていた。そっちの方が安上がりだからである。

しかし、やはりいずれは公開TOEICを受けないといけなかった。

まず、学内で受けるTOEICよりも信ぴょう性が高いからである。ちなみに、就職活動では、基本は公開の方でなくてもスコアとして認定してくれる。

しかし、公式に受けたという証(黄色のスコアシート)として、そっちを受けておいた方が良いのだ。

あともうひとつは、というかほとんどこの理由で公開を受けたといっても過言ではないのだが、編入学ではほとんどの大学が公開TOEICしか受け付けていないからである。

僕が知っている限りでは、埼玉大学以外は全部公開TOEICを提出しないといけないのだ。

あ、埼玉大学以外にも姉妹校である千葉外語大学は学内で受けるTOEICでも大丈夫だった。

とにかく、編入学でTOEICを提出しないといけない大学を受ける人は、どこかのタイミングで受ける必要があるのである。

そして今日が3月の公開TOEICのスコアの結果が分かる日である。

普通はスコアシートが家に届くのであるが、それが来るのは試験を受けてから1ヶ月後と時間がかかる。

なので、受けてから3週間後にTOEICの公式ホームページから確認できる。

恐るおそるブラウザを開いて、ホームページに入った。

毎度のことだが、緊張する。

タッチする指が微かに震えたいた。

1年生が終わるまでに、僕はスコア800を取るという目標を立てていたので、これで取れてなかったら目標は達成できないということになる。

以前の目標、年末までにスコア700はかろうじて達成できた。

今回は本気で達成できる気がしなかった。

普通に考えてみれば分かることだが、ものごとはレベルが上がれば上がるほど難しくなる。

TOEICも例外ではなく、例えばスコア600から700まで上げるのと、スコア700から800まで上げるのでは話が違ってくる。

ジョナサンいわく、スコア700まではテクニックだけでなんとかなるのだが、700以上を取るにはテクニックだけでなく本物の英語力が必要になるというのだ。しかも、僕が立てた目標スコア600から700、スコア700から800の両方の目標を達成する期間は同じ3カ月。

これまで以上に厳しい戦いだった。

次のクリックでスコアの結果が分かる。

僕は目を瞑った。

5秒後、ゆっくりと目を開けると、信じられない光景が僕を待ち構えていた。


・・・805。


目を疑った。まさか本当に目標を達成してしまうなんて。いまだに心臓がバクバクしていた。

落ち着かない様子でいると、琴音、菜奈、ジーコが僕のもとにやってきた。

特に、ジーコは僕を心配していた。

「ケン、どうした?」

「公開TOEICの結果を見てたんだけど、よかった。800いったよ」

「マジか、ケンやったな!」

「えー。ケンに先越されっちゃったよー」

菜奈は悔しがっているようだが、僕を祝福してくれた。

「よかったね。ケン、ホントすごいよ」

一瞬、何が起こったのかよく分からなかったが、気がつくと琴音が僕に抱きついていた。

「おいおい、俺らの前でのろけるのやめてくれよー」

ジーコはやれやれといった感じだった。

「ならわたしたちもハグするー?」

菜奈は相変わらずだった。

「なんでだよ(笑)」

ジーコの華麗なツッコミが炸裂した。

 
僕はまた一歩合格へ近づいたこと認識し、ほんの少しだけ自信をつけることができた。

・・・・


16話は以上です。今後に注目していきたいですね!

今回は、編入独学勢の方にとっては専門的な対策を実施している機関の貴重な対策方法について聞けることができる回でしたね。ぜひ、この小説を通して、編入試験に多くの方にチャレンジするようになれば幸いです。

次の更新は、6/7(金)20:00です。お楽しみに!

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