小説・コラム

小説 『編入』#21 第三章⑤

小説編入イメージ

夏梅雨もあけて夏本番ですが、いかがお過ごしでしょうか?大分暑くなってきたので体調管理には注意していきたいですね!

さて、今週もやってまいりました!毎週金曜日20時投稿の連載記事である編入小説『編入』のコーナーです。

この連載では、「世の中の多くの人に大学編入を知ってほしい!」、「転職するように、自由に大学に移れることが当たり前の世の中にしたい!」という想いを実現するための私たちの活動の一環です。

大学編入を専門としているメディアであるTrask(トラスク)では、この小説を通して、多くの方に大学編入を知ってもらいたいと考えております。

さらには編入を志望するすべての方にフィクションではありながらも、編入した先輩の実話を元にした作品を通して、実際の編入試験のイメージを持ってもらい、合格の一助となれればと考えております。

ぜひ、周りのご友人やご家族にシェアいただけると幸いです!

著者プロフィール

濱田 友来人(ハマダ ユクト)

平成7年生まれ。熊本県熊本市出身。
高校卒業後上京し、専門学校神田外語学院に入学。同学校卒業後、そこで培った経験や学びを活かし、4年制大学に3年次編入。
現在は執筆業、FXトレーダー業を主軸に活動しながらも、自らが掲げている「限りなき挑戦」という理念の下、上述した以外のことにも上述した以外のことにも挑戦している。
趣味はゴールドジムでの筋力トレーニング。



#21 第三章 『編入学試験を受けるということ』⑤

・・・・

この頃、僕は編入試験とはまた違ったあることで頭を悩まされていた。

ここ最近、琴音との関係がうまくいかなくなってきたのだ。その原因は、会う頻度が激減したからである。

それが勃発し始めたのは4月からなのであるが、その時期は2年生になって本格的に編入学の勉強が始まった頃だ。

それまでは琴音とは週に1回は会って一緒にいたが、2年生になってからはどうもそのペースで会うことが難しくなっていた。月に2回会えれば良い方であった。

講座自体は平日の放課後で、その点はそこまで大したことはなかったのだが、編入学の勉強はただ講座を受けてればいいわけではない。むしろ、それを受けたあとの復習が断然大事なのである。

だから、その復習で平日だけでなく土日も時間が取られてれてしまうのである。正直なところ、僕は現在まで習っているところまでの復習で手一杯だった。いや、下手すると若干遅れているかもしれない。

さらにその復習に加え、僕にはビジネスリサーチの個人的な作業やグループでの集まりもある。

それでもなんとかして琴音との時間を作ってあげたかった。しかし、どうしてもやはり1年のときのようにはいかなかった。

これは完全に僕の時間の使い方に問題があるのだが、琴音も琴音で少しは編入の大変さを分かって欲しいと切実に思っていた。

『ねえ、ケン。今度の日曜日どっか行かない?』

『ごめん。ちょっとその日は編入の勉強とビジネスリサーチでどうしても次の授業までに完成させておかないといけない作業があるんだよ。だから丸一日は厳しい。夜だっら空いてるから、どこかで食事でいいかな?』

『・・・・・。この前もそうだったじゃん』

『ホントに悪いと思ってる。来週は1日使ってどっか行こう。それは約束する』

『わかった。なら今週は食事だけでいいから来週は一日中開けておいてよね』

『うん。ごめんな、琴音。時間作ってやれなくて』

『いいよ。なら切るね』

『おやすみ』

ピッ。

スマホを机の上に置くと、僕はハァと大きなため息をついた。

 

 

昨日のどんよりとした気分は翌日になっても晴れていないのに加え、今日は群馬大の結果が発表される日である。

1学期の授業のテストはすべて終わり、今日は最後の授業日でもあったので、ビジネスキャリアの授業では1学期のまとめ的なことをやって終わり、英語での授業はレクリエーションパーティーという名のお菓子パーティーを行った。

このお菓子パーティーが唯一の救いで、僕の気持ちを少しだけ晴らすことができた。

授業が終わったあと、僕は菜奈と編入センターに行った。すでにジーコがいた。

「よし。2人とも来たな。なら結果見ようか。もう出てるはず」

「そうだな。じゃ、見てみよっか」

僕らはそれぞれインターネットを開いて、群馬大の編入のページにアクセスした。

深呼吸をして、合格番号を確かめた。

僕はどんな結果でも受け入れるつもりだった。

・・・・・

そこには僕の番号はなかった。

「ダメだった。落ちたわ」

「わたしも」

「俺もだ」

結果を知って、一気に疲れが僕の全身を襲った。椅子の背もたれに寄りかかってぐったりとしてしまった。

数十秒経って、ジーコが口を開いた。

「しょうがない。切り替えよう」

ジーコに同意し、僕も気持ちを切り替えることにした。だが、菜奈はそうはいかなかったようだ。

菜奈の目が赤くなっていた。涙は流してはいなかったが、いまにも泣きそうな顔だった。
ジーコはそれを察知したのか、そっと菜奈の背中を叩きながら慰めた。

「菜奈。これは本命じゃないだろう?別に群馬は落ちてもいいじゃないか」

「う、うん。ごめんね」

菜奈が泣いてるのを見たのはこれで2回目だったが、やはり普段とんでもないくらい明るい菜奈が泣いてると、僕にも胸に刺さるものがあった。

 

群馬大の結果発表から2日後、夏休みに入ったこともあり、今日から編入学の夏期講座が始まった。

一学期と取る科目は変わらないのだが、講座のシステムに多少の変更があった。

これまでは、例えばマクロ経済学は週に1回で特定の曜日にあり、その他の4科目も週1ペースで行われ、1週かけてすべての科目が1回ずつだった。

しかし、夏期講座に関しては、例えばマクロ経済なら夏期で行う分はすべて同じ週で行われることになるのだ。

つまり、ある週ではすべての日がマクロ経済学になり、その週に限っては1週間ずっとマクロ経済学漬けの生活になるのである。

ちなみに、夏期では土曜日も行われ週6日体制で講座が行われる。

なぜこのような体制になっているのかはよく分からなかった。遠山先生もそれについてはなぜか知らなかった。

夏休みになってもずっと学校に来ないといけないのか、と思う人もいたみたいだが、僕は決してそれがいやではなかった。

むしろ、僕はそれを嬉しくすら思った。僕はこの学校が大好きなのだろう。

講座が始まる30分前に教室に入るとすでにジーコが席に座っていて自主勉強をしていた。

「よっ。朝早いな」

「お、ケンか。今日から少し早めに来て自主勉するようにしたんだよ。この前の結果はやっぱり悔しかったからな」

「確かにな。次受けるところはきっちり取りたいな。あれ、菜奈は一緒じゃないのか?」

「あいつ、寝坊したから置いてきた(笑)。明日からは早く来ると思うけどな」

「そっか。もう大丈夫なの?」

「うーん。昨日も若干落ち込んでたけど、切り替えるっては言ってたよ」

「今日は様子見って感じだな」

「まぁ、大丈夫だと思うけど」

それから僕らは講座が始まるまで勉強した。

菜奈は開始時間ギリギリに来た。今日の菜奈を見てる感じでは特に変わった様子はなく、いつもどおりといったところだった。

先生が教室に入ってきて、さっそく始まった。

「みなさん、こんにちは。今日から夏期講座が始まりますね。夏休みもほぼ毎日学校に来ないといけないのは大変でしょうが、頑張りましょう。今後、将来こんなに勉強することはもうないでしょうから、逆にいい機会だと思います。私も皆さんが行きたい大学に合格できるようにできる限りの支援は行いますので、よろしくお願いします。

あと、ひとつ言っておきたいことが。この夏期講座から経済学も経営学も発展的な内容になってくるので、これまで習ったことが全部理解できているという体で授業を進めていきます。なので、空いた時間はきっちりここまで習った授業の内容の復習に時間を割いてください。過去にも、1学期の内容が理解できていなかったため、途中から何を言っているのかさっぱり理解できずにドロップアウトしてしまった先輩たちがいました。なので、そうはならないでくださいね。では、始めて行きましょうか。今週はミクロですね。今日はっと、生産者理論のところですね」

 

授業が終わり、一段落休憩を取った。今日の内容はちゃんと理解できたが、これからも大丈夫かと言われると、自信を持ってイエスとは言えなかった。

授業のはじめに先生が言ったように、これまで以上に復習に力を入れ、自分の頭の中だけで答えを組み立てられるようにしておこう。

小論文に関しては、夏期の間は毎日文章を書き、常に自分の書きたいことにオリジナリティーが出るようにする訓練を行う。

僕はこの期間での目標を立てて、行うことにした。一応、先生にもこのことを話したところ、それで大丈夫というお墨付きをいただいた。

それから僕はこれまで以上に気を引き締めて編入学の勉強に打ち込んだ。

もともと、僕は勉強すること自体は嫌いではなかった。一般受験時のときは勉強に身が入らず結果を出すことはできなかったが、今回はそんなわけにはいかなかった。

あのときとは背負ってるものが違うからである。一般受験時では熊本にいたこともあって、別に落ちてもいいだろうという思っていたので、そこまで勉強に身が入らなかった。

しかし、今やっている編入の勉強では話が違う。

僕がこんなに頑張れるのは、これからの人生を歩んでいくうえで自信をつけたかったこともある。だが、一番の理由は自分を支えてくれる人に対する恩を結果を出すというカタチで返したかったからである。

突然僕が切り出した「東京に行きたい」という願いを聞いてくれた母や、上京したあとでも時折経済的な支援をしてくれる親戚に、こんな自分でも本気を出したらトップレベルの大学に受かるんだということを示したかった。

学歴があるからとかそういうことではなく、これまで自分がしたこともない高い壁に挑戦していく姿を見て欲しいのかもしれない。

だから、僕はこの「編入学」というフィールドでなんとしても結果を出さないといけない。ここで諦めてしまったら、一生うだつの上がらない人生を送ってしまうんじゃないかと思うと、それが僕にとっての一番の恐怖だった。

僕は夏休みの約1ヶ月間、ほとんど編入のことばかり考えていた。それと同時にこれまで受けた講座の復習や小論文の再提出を誰にも負けないくらいした。

当然、頑張るのは僕だけではない。ジーコや菜奈も同様、僕に負けないくらいに頑張っていた。

それがいい相乗効果となり、僕らはお互いに切磋琢磨することができた。

こう書くと、毎日ガリ勉で意識高い系みたいに見えるかもしれないが、ときには遊びに出かけたりもしていたし、休み時間やご飯を食べに行く時間に3人で過ごす時間は非常に楽しかった。

しかし、これまで以上に勉強に時間を割いたので、それ以外での自分の時間が大きく減少したのは事実である。

僕はのちにその代償として大切なものを失うことになる。

・・・・


21話は以上です。夏休みは毎日勉強漬けで大変になりますが、受験生の方は是非乗り越えて欲しいと思っております!

※今回は期日までにアップロードができずに大変申し訳ございませんでした。次回以降からはできるだけ期日にはアップできるように努めて参りますので、これからもよろしくお願いします。

 

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