夏休みも終盤ですね! 試験対策が十分な方もそうじゃない方も気を抜かずに秋の本番に向けて気合を入れて行きましょう。
さて、今週もやってまいりました!毎週金曜日20時投稿の連載記事である編入小説『編入』のコーナーです。
この連載では、「世の中の多くの人に大学編入を知ってほしい!」、「転職するように、自由に大学に移れることが当たり前の世の中にしたい!」という想いを実現するための私たちの活動の一環です。
大学編入を専門としているメディアであるTrask(トラスク)では、この小説を通して、多くの方に大学編入を知ってもらいたいと考えております。
さらには編入を志望するすべての方にフィクションではありながらも、編入した先輩の実話を元にした作品を通して、実際の編入試験のイメージを持ってもらい、合格の一助となれればと考えております。
ぜひ、周りのご友人やご家族にシェアいただけると幸いです!
著者プロフィール
濱田 友来人(ハマダ ユクト)
平成7年生まれ。熊本県熊本市出身。
高校卒業後上京し、専門学校神田外語学院に入学。同学校卒業後、そこで培った経験や学びを活かし、4年制大学に3年次編入。
現在は執筆業、FXトレーダー業を主軸に活動しながらも、自らが掲げている「限りなき挑戦」という理念の下、上述した以外のことにも上述した以外のことにも挑戦している。
趣味はゴールドジムでの筋力トレーニング。
#23 第三章 『編入学試験を受けるということ』⑦
・・・・
9月はじめ、僕らは2つ目の大学の準備をしていた。その大学は関西圏にあり、その中でも大きな湖がある県にある。滋賀大学だ。
滋賀大学と聞いて、少し微妙な反応をする人が多いだろう。それはあまり名前を聞かないからだ。
僕も最初滋賀大学と聞いて、首をかしげてしまった。
以前、陶山先生と話していたときに、そうなってしまっていて、失礼なことをしたと反省している。
しかし、話を聞いてみると滋賀大学は実は結構すごい大学であるということが分かった。
滋賀大学の経済学部は全部で6学科あり、日本では珍しい総合経済学部なのである。経済学部で言ったら、滋賀大学は関西圏では4番目に君臨し京都大、大阪大、神戸大についでレベルが高い経済学部である。
一般的には滋賀大学と聞くとあんまり知名度は高いとは言えないが、企業からすると滋賀大学の学生はかなりの需要があり、特に金融業界で名の知れたところに就職した先輩を多く輩出しているのである。
そう聞くと、なんとすごくいい大学だ。さらに、滋賀大学は編入学でもかなり積極的な大学のひとつで、定員は20人と募集要項に書いてあるが、毎年35人くらいは取ってくれる。
その35人の中からうちの専門学校から約3分の1ほど合格者が出る。なぜこの学校からこんなに合格者が出るのかというと、それは試験内容の構造が原因であるのだが、僕らにとってはそれはすごくありがたいのだ。
もちろん、一番は旧帝国大に合格したいのだが、もしその次に行きたい大学は?と聞かれたら、僕は滋賀大学と答えるだろう。
試験内容は面接とTOEIC提出の2つで行われる。試験日は今月の中旬であと2週間弱しかない。
ひとつ目の面接に関しては、これまでの情報を聞いてる限りでは編入学では普通の面接だそうだ。面接官である先生によって若干聞いてくる内容や深堀りの程度は異なってくるのだが、おおむね優しい質問形式であると先生は言っている。
群馬大の頃から面接練習は行っていたので、今になって慌てて始める必要もないし、本番までに5回ほど少し突っ込んだ模擬面接を行えば大丈夫だろうと踏んだ。
ふたつ目のTOEICは、今年の3月にスコア800を取っており、それを提出する。
過去にこの学校から滋賀大学に合格した先輩方の平均スコアは750であるので、TOEICにおいては僕はほとんど問題がなかった。
スコア800持ってて、なおかつ面接でもそこまで的外れな解答をしなかった先輩方で落ちた人はいないとも先生は言っていた。
なので、決して舐めてかからず、真摯に向き合っていれば、滋賀大の合格はかたいと見たのである。
しかし、ここでひとつある問題が僕を若干困惑させていた。
それは、合格発表が年明けの1月末ということである。
これは東北大の最終合格発表日よりも遅かった。
僕は募集要項を見て、「すげー待たせるな」と軽くガッカリした。
面接は9月なのに発表は1月、というかほぼ2月じゃねえかよ!
百歩譲って、TOEICの提出を12月まで待ってくれるのでそれなりに遅くなるのは理解できるが、それでも年明けから約1ヶ月後なのかと嘆いていた自分がいた。
面接してから4ヶ月間自分が受かってるのかどうか分からないまま年越しで待たされる受験者の身にもなって欲しいものだと思った。
と、ここまで愚痴を言っていたが、これ以上言っても何も起こることはないので、僕は淡々と試験への準備を進めていくしかなかった。
僕はこれまでの専門科目の勉強の質は落とさずに面接の練習に力を重点した2週間を送ることにした。
陶山先生との模擬面接はいつも本番より圧迫気味で質問を僕にぶつけてくるので、毎回何度か答えるのに苦戦を強いられていたが、それでも自分がイメージしている答えに日々近づいていくのを実感することができた。
全体的にはこの2週間は順調に進んでいたように思う。練習ではうまくいっていても最終的には本番で結果を出さないといけない。
だが、今回はなんとなくうまくいきそうな予感がしていた。
編入の勉強のかたわら、ビジネスリサーチの作業にも手を抜かずに取り組んだ。
夏休みに決めたスケジュールどおり、アンケートの内容をまとめ、2学期に入ってから実施することができた。
この調子だと10日までには目標の数を達成できそうだったし、少し前倒しでインタビューを行うことができると見込んだ。
この2週間は2年生に入って一番忙しかったのであまり覚えてなかったのだが、あっという間に過ぎていった。
いや、この2週間でなく僕が東京に来てからここまでの日々があっという間だったな。
気づいたら僕は編入学という戦場に足を踏み入れていたのだ。
時が過ぎるのは思ったより早い。おそらく編入生活も気がついたら終わっているだろう。
だからこそ、この一日一日をしっかりと噛み締めて過ごしていかない。
僕ら3人は群馬大のときみたいに先生に挨拶をしたあと、東京駅に向かった。
今回の受験は滋賀県の彦根にあるので、新幹線で行かなければならなかった。なので、交通費がかなりの痛手となった。宿泊費もかかるので合わせてそれだけで3万円かかった。 それに受験料は毎度毎度3万かかるのでトータル6万円だった。
さすがに僕一人で6万円すべてをまかなうことはできないので、母に半分出してもらった。
東京駅から彦根まで約2時間半かかるので、僕らは新幹線の改札内で駅弁を買って中で食べることにした。
「いやぁ、新幹線って最高だなー。ゆったりと駅弁食いながら移動がこんなに快適だったとはなー」
「ねー。わたしたち旅してるみたーい」
ジーコと菜奈は新幹線に乗っているせいか、やや興奮気味だったので僕はこう言った。
「おいおい。遊びに行くわけじゃないんだぞ。なんだかんだで明日は本番なんだからさー」
「わりぃわりぃ。俺さ、新幹線乗るの初めてなんだよ。この時間くらい羽目外してもいいんじゃないか?」
「そうだよー。ケン、気張りすぎじゃなーい?この時間くらいは旅行気分味わおうよー」
2人を説得するどころか、逆に丸め込まれてしまった。
結局、僕らは最後まで窓の景色を眺めながら、周りの乗客に迷惑がかからない程度におしゃべりしまくった。
夕方6時過ぎに彦根に着き、僕たちは予約していた旅館を探した。
滋賀大の近くにいい旅館があったので、今回はホテルではなくここに泊まることにした。彦根駅からタクシーで5分で旅館に着いた。
フロントでチェックンを済ませ、部屋に入り荷物を下ろすと、体が急にグッタリと重く感じた。
長旅で疲れたのかな。最近体が疲れることが多くなったような気がする。新幹線の中では2人とだべってないで仮眠を取ればよかった。
夕食は女将さんが部屋まで持ってきてくれるので、荷ほどきをすればあとはほとんどすることはない。それまで僕はゆっくりしておきたかった。
「ちょっと、ご飯が来るまで横になってていい?」
「もう30分もしないうちにメシ来るぜ?」
「それまで、ちょっとだけな。少し疲れてるみたいだ」
「そうなのか。俺らここら辺探検してくるよ。鍵置いとくから帰ってくるまで部屋にいてもらってもいいか?」
「オッケー。楽しんで来いよ」
バタン。
「ふぅ」
腕を額にあて、僕は部屋の天井をぼーっと眺めていた。
なんだかんだで明日は本番なのである。
何もせずに横になる時間あるがあっても良いのだろうかと心配になってきた。
そんなことを考えていると、まぶたが少しづつ重くなってきて意識が遠のいていった。
やっぱり僕は疲れているのかもしれない。
きっちり30分後、ジーコと菜奈が部屋に戻ってきた。
その直後に着物を着た女性が来て夕食を持ってきてくれた。
「ケン、戻ってきたよー。おーきーてー」
「ふわぁー。ふー。おぉ。戻ってきたか。あ、ドアがトントンなってるよ。夕食来たぜ」
ジーコがすぐさま対応した。
「あ、すみません。すぐ机出しますんで」
「いえいえ、ゆっくりなさっていいですよ。彦根に来たのは初めてですか?」
「は、はい。彦根はものすごくきれいな街ですね。気に入りました」
「今回はどういったご用事でお越しになられたんですか?」
「明日、滋賀大学の編入試験があるんですよ。それで東京から来ました」
「あら、そうだんたんですか。わざわざ東京からありがとうございます。明日のために今日はしっかりと休んでくださいね」
「ありがとうございます。僕ら明日頑張ってきます」
「それでは、ごゆっくりどうぞ」
ジーコが話している間に机に料理が並んだ。
着物の女性が帰ったあと、ジーコが僕の耳元でこうつぶやいた。
「おい、ケン。あの女将さんめっちゃ綺麗だったよな!」
なに言ってんだこいつは、と思った。だからさっきはあんなにウキウキと喋っていたのか。
「俺もそう思ったけど、大丈夫なのかよ。菜奈がいるのに」
「それとこれとは別だって」
「なに2人でコソコソ喋ってんの?」
洗面所から菜奈が出てきた。
「いやー、さっきの女性がめっちゃ綺麗だなって思ってさ」
こいつマジか。彼女の前でそんなこと言うのかよ。
「はぁー。バカじゃないのー?」
菜奈のこの態度は当然だった。しかし、全く本気で怒ってはいなかった。
あ、このカップルは冗談が言い合える仲だったのか。2人の一連のやりとりを見て、僕は2人を心底うらやましく思った。
僕らもあんな感じになれたらな。そんな感情が一瞬よぎった。そのあと、僕は琴音に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
明日面接が終わったあと、琴音に連絡しよう。できれば、どこかで一緒にいてあげられる時間を作りたい。
改めて目の前にある料理を見た。ここまで豪華な料理を食べるのは何年ぶりだろうか。あまりの神々しさに僕らは感動した。
僕たち3人はこの至福のひとときを記憶にしっかりと刻みながら過ごした。
食事を終えお風呂に入ったあと、僕たちはお互いに面接練習を1時間程度行った。
本番前の最終チェックというやつである。
3人とも投げかけた質問に対してはほぼ自分がイメージしていたものを答えることができたので、明日はリラックスさえしていれば練習通りうまくいくだろうと確信した。
そしてこの日は早めに寝て、明日に備えて体調を万全にした。
・・・・
23話は以上です。久しぶりの更新となってしまいましたが、今後ともよろしくお願いいたします。では、次回もお楽しみに!
ぜひ、この小説を通して、編入試験に多くの方にチャレンジするようになれば幸いです。
次の更新は、9/6(金)20:00です。お楽しみに!